毎日がゴミの日

はきだめ

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5年前、大好きな人がいた。

多分あれが、いわゆる初恋だったのだろう。

 

何度も皆には話した記憶がある、文章にも書いたりして、何だか自意識を爆発させていた記憶が。

 

でも結局は、ただただ1人で舞い上がるという、恋に恋していた状態だった。

だって、もしうまくいったとして付き合った後どうするか、とかなーんも考えてなかったからね。

ま、片思いで終わって1人で勝手に失恋して(卒業後相手に彼女ができていた)終わったんですけど。

 

 

それから、恋愛に関する縁は全くもって姿を消した。峠野恋愛失踪事件である。

 

私は捜索願を出した。

だって大学には夢のキャンパスライフが待っていて、薔薇色の人生が待ってるって誰かが言ってた。

そこに私の恋愛があるのだと、信じてやまなかった。

しかし、どこにもそんなものは存在しなかった。

峠野恋愛失踪事件、迷宮入りである。

 

 

私は見つかりもしない恋愛を、夢を、希望を、命からがらずっと探し続けた。

私の周囲には、キラキラと輝くそれを手にした人がたくさんいた。

羨ましかった。

妬ましかった。

死にたくもなった。

 

そうして私は、暗中模索しているうちに、自分の中にあったはずの大切なものを反対に失っていった。

自分に対する自信が、するすると私の手からこぼれ落ちていく。

そのかわり、これ以上育ってはいけない自意識が、プライドがむくむくと大きくなっていく。

 

そうしてそこにいた私は、本来持っていたはずの魅力さえも失った、目も当てられない女と化していた。

 

 

諦めた。

あー、無理やな〜〜私には無理なんだわ、捜索願を出したとて、そもそも存在しないものを見つけることなんてたとえどれだけ優れた名探偵でも無理な話。

私は何をしていたのだろう。

私は、このままきっと、愛なんてものを知ることなく1人で死んでいくのだろうなあ、悲しき人生よ、と本気で考えた。

 

でも、何となくこのまま死ぬのは嫌で、いや、1人で死ぬとしてもそれ相応に、女として生まれて、捨てようとしても捨てられなかった女性性を抱き続けるならば、いっそ輝いて死にたい、と。

別に恋愛が全てじゃない、私1人の力でも輝けるのなら、それでいいじゃないか。

 

そこから、自分を少しずつ好きになる努力をした。

 

外見も、中身も、少しずつではあるけど肯定するように努めた。

ちょうどその頃社会人になって、努力する自分が意外とかっこいいことに気がついて、ますます失ってしまった自信を取り戻すよう、前向きになることができた。

 

 

そして、そんな時に出会ったのが、件の先輩だった。

最初はただの指導員だった。

なんかそっけなくて、私とは反対に表情も乏しそうで、冷たいなあ〜〜とか思って。

 

そうそう、私は今まで、(恋愛以外で)出来ない人扱いをされたことがあまりなく、情けないことに社会人になって初めて自分が優秀なのではなく、ポンコツなんだと知ったのだけれど。

 

そんなポンコツな自分を認め始めたときに、要領よく仕事をこなす先輩は、正直言って羨ましかった。こんなポンコツな私がアホみたいな質問をしても、(面倒そうな素振りを見せても)丁寧にわかりやすく教えてくれるのは、正直言って嬉しかった。

 

研修中は、本当にそれだけ。

先輩はあくまでも尊敬の対象。

恋愛感情なんてこれっぽっちもなくて、強いて言うなら「推し」。オタク特有の感情を抱いただけ。

 

 

ただ、あれだけそっけなかった先輩が、雪解けのごとく私に笑顔を見せてくれるようになって、私をほどよくいじってくれるようになったのは、単純に自分の存在が認められた気がして半端なく嬉しかったけど。

 

 

研修が終わる頃、なんだか自分の気持ちに違和感があることに気がついた。

嫌な予感がした。

この違和感の正体に気がついたら、私はまた後悔するぞと、第六感が叫んでいた。

だから、蓋をした。

もう傷つきたくなくて。

あの5年前のトラウマを、といっても今思うとなんもしてないんだけど、また味わうなんて死んでも嫌で。

気がつかないふりをした。

 

 

でも、金庫が「ここに財産がある」ことを暗に示すのと同じで、蓋をしたらそこに大切な何かがあることは明白で、気にならないわけがなかった!私は愚かだ!なぜそんな簡単なことに気がつかない!!

 

 

ということであっという間に(?)それが五年ぶりに抱いたあの恐怖の感情なのだと自覚してしまった。

 

 

自覚してからは最後、あの時の私が、あの時から何も成長していない私が、私の身体を蝕んでいく。

 

オメーは23歳なんだわ!18歳じゃないんだわ!それはもう通用しないんだわ!

という状況に何度も陥る。

先輩の言動に一喜一憂する。脊髄反射もいいところ。反射神経がアスリート並み。オリンピック出場も夢じゃない。

 

本当に変わってないな、と落ち込んだ。

 

 

でも、そうじゃなかった。

私はあの時から確実に変わっていた。

1人の中で勝手に思い込んで解決させていた恋愛を、ようやく外に向けることができるようになった。

ちゃんと言動で、相手に向き合うことができるようになっていた。

恋に恋する状態からは卒業できていた。

何が原因かはようわからん。加齢か?知らんけど、私は以前の私じゃ想像もできないくらいに、先輩に好きだと伝えられるようになっていた。

 

え〜〜こんなにピュアピュアな23歳、そうそういないのではないか?

 

 

でもとにかく、片思いで今回も終了するのだろうと、悲観的に考えていた。

きっとただの後輩にしか思ってなくて、私の反応が面白いから一緒に過ごしてくれてるだけなんだろうなって。

はーーーすげーーーおちこむやん、元気出せ。

 

 

 

そして、迎えた2018年9月23日、私の人生は大きく変わった。

この異常気象やら偉人のご逝去やらが立て続けに起こる平成最後という状況が私にパワーを与えてくれたのか、あるいはパワーに満ち溢れた私がその一因なのか、因果関係は明白ではないが(どっちでもねえよ)、あれだけ恋愛、まして付き合うだなんて無縁だと思っていた私が、先輩と付き合えるようになった。

 

 

幸せで死んでもいい。不安で仕方ない。信じられない。好きで好きでどうしたらいいのかわからない。本当に私が彼女だと思ってくれるのか。女性と2人で飲みにいくときは事前に言って欲しい。他の人とはこんなことしてない?したこともない?風俗とか、マッチングアプリとかやってない?他にも女の子とかいたりしない?もう不安で仕方ない。私を本当に選んでくれたのか?私は信じていいのか?私は本当にきっと言葉では表せないくらい先輩が大好き。本当に今まで味わったことのないくらいの感情で、わけがわからない。どうして私を好きになってくれたの?いつから?女の子って言葉にしてくれなきゃわかんないんですよ。重たくてごめんなさい。ネットで調べたり、友達に相談したりしてる中で、1人でめちゃくちゃ泣いたりしたんです。昨日なんて、母親に泣きながら電話したんです。きっと私のことなんて、そんな風に思ってくれない。手を繋いでくれたのも、きっとそんな感情ないんだ。また私は傷つく羽目になるのか、って。友達に彼氏ができたって、母親に彼氏ができたって報告していいですか?私ね、先輩のこと大好きなんです。今日しか言わないかもしれないからいっぱい言っときますね。内定者に可愛い子がいてもなびかないでくださいね。幸せで今本当にしんでもいい…

 

 

と、怒涛に先輩の相槌を待ちながら質問と感情をそのままぶつけた。

 

何だか本当に重たい女で嫌になってくるけど、取りこぼしたまままだ取り戻せていない自信を、少しずつでいいから取り戻せていけたらなと思う。

 

きっとこれからも悩むけど。

私は思ったら素直に言ってしまおうと思います、

 

ええー自意識過剰な飲み会を開こうと思いましたが、きっと皆を目の前にしたら恥ずかしくて何も言えないと思うので、やっぱ文章にしておいておきます。恥ずかしくなって消すかもしれんけど。

 

普通に飲むのは大歓迎なので、また皆でワイワイ騒ぎましょうね。